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「お忙しいところ恐縮ですが」が答えを短くする

第五章では、前の章で残した質問を、前置きなしに書き直します。多くの方にとっては、削るより難しい作業です。

前置きは丁寧さのつもりで付いています。ところが録音を聞き返すと、前置きの長い質問ほど答えが短いという、はっきりした傾向が出ます。

なぜ短くなるのか

質問の輪郭がぼやけるからです。「お忙しいところ恐縮ですが、差し支えなければ、当時のことを少しだけ伺えればと思うのですが」と言われると、相手は何を聞かれているのか最後まで待たされ、しかも「少しだけ」と言われた以上、短く答えるのが礼儀だと受け取ります。

前置きは、答えの長さの指示になっています。「少しだけ」と言えば、少しだけ返ってきます。
タイプされた原稿と万年筆
第五章の書き換え。前置きに線を引き、残った部分だけを読み上げてもらいます。

書き換えの手順

  • 質問を声に出して読み、疑問符までを聞く。疑問符の直前の十語以外は、たいてい前置きです。
  • 「差し支えなければ」「もしよろしければ」を消す。断りやすくするための言葉ですが、答えたくない質問なら相手は勝手に断ります。
  • 「少し」「ちょっと」を消す。量の指示になっています。
  • 敬意は語尾に残す。前置きを削っても、丁寧さは失われません。むしろ質問が明確なほうが誠実に聞こえます。

やりすぎないこと

ひとつだけ残していい前置きがあります。相手が話しにくい話題に入るときの、ひと呼吸ぶんの合図です。これは礼儀ではなく、相手が心の準備をするための実用的な間で、消すと質問がぶつかります。

その見分けは、書いているときにはつきません。録音を聞き返して、相手が答えるまでにどれだけ間があったかを見ると、必要だった前置きと不要だった前置きが分かれます。

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